2009年03月21日

耳で読み解く日本国憲法「第82条」

耳で読み解く日本国憲法第62回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第82条、裁判の公開についてです。

裁判の公正さを確保するために公開裁判を原則としています。誰でも希望すれば裁判を傍聴(許可を得て静かに聴く)ことを許されています。
しかし、報道の面ではテレビ・カメラの持ち込みは禁止され、開廷前の限られた時間のみ写真撮影が認められています。
訴訟当事者が裁判官の前で自己主張をお互いに戦わせる対審は公開しなくてもよいとされています。
また、訴訟関係者のプライバシーに対する配慮を考え、また公の秩序又は社会的に悪い害を与えるような内容であるとき、公開しないこともあります。

第82条1 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

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耳で読み解く日本国憲法「第81条」

耳で読み解く日本国憲法第61回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第81条、法令などの合憲性審査権についてです。

終審裁判所とは、最終の審理を行い、裁判をする裁判所のことを指します。
国会が制定する法律や行政機関が制定する命令や行政機関が行う行政処分などが、憲法に違反していないかどうかを審査し判定する権限のことを合憲性審査権といいます。
最終的に決定するのが最高裁判所としているだけで、他の裁判所にも合法が違法か審査権は持っています。

第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

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耳で読み解く日本国憲法「第80条」

耳で読み解く日本国憲法第60回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第80条、下級裁判所の裁判官についてです。

下級裁判所とは、最高裁判所以外のすべての裁判所、具体的には高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所を意味しています。
この下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が指名した人を内閣で任命する仕組みになっています。任期は10年とされていますが、特別な理由がない限り再任されます。
これは裁判官の身分保障に繋がってきます。簡易裁判所は70歳、高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所は65歳が定年になっています。

第80条1 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

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2009年03月14日

耳で読み解く日本国憲法「第79条」

耳で読み解く日本国憲法第59回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第79条、最高裁判所の構成、最高裁判所の裁判官についてです。

最高裁判所は、その長である裁判官すなわち最高裁判所長官とその他の裁判官すなわち最高裁判所判事を14人としています。最高裁判所長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命し、その他の裁判官は内閣が任命します。
最高裁判所長官の国民による審査制度もあります。これは衆議院議員総選挙と同時に行われます。その審査で投票者の多数が罷免に印をつけた場合、辞めさせられます。また、定年70歳に達した時には退官しないといけません。
最高裁判所の裁判官は、長官は内閣総理大臣と同額、その他の裁判官は国務大臣と同額の報酬をもらうとされています。報酬を減額することができないというのが、身分保障の規定にされています。

第79条 1 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときに退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

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耳で読み解く日本国憲法「78条」

耳で読み解く日本国憲法第58回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第78条、裁判官の身分保障についてです。

司法権の独立を確保するために、実際に裁判を担当する裁判官が職務を行う上で、与えられる権利の独立を確保する必要があります。そのためには裁判官の身分の保障を約束しなければなりません。
自らの意思とは反して裁判官を辞めさせられる、罷免される場合を2つの場合に限定しています。一つは、職務を執り行うことができないほどの心身の故障をしている場合です。
もう一つは、公の弾劾、自らの犯罪や不正の責任をとるよう求められた場合です。この放送を聴いているだれでも罷免の訴えをすることができます。ただ行政機関は裁判官の懲戒処分はできません。これも裁判官の身分の保障に関係しているからです。

第78条  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

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耳で読み解く日本国憲法「第77条」

耳で読み解く日本国憲法第57回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第77条、裁判所の規則制定権についてです。

最高裁判所や最高裁判所の委任を受けた下級裁判所の裁判官会議の議決によって規則を定めます。最高裁判所の規則は裁判官・裁判所の職員たちだけでなく、訴訟の当事者や証人などの訴訟関係者、裁判を聞いている傍聴人なども従わないといけません。

第77条
1  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2  検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3  最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

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耳で読み解く日本国憲法「第76条」

耳で読み解く日本国憲法第56回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第6章「司法」第76条の司法権と裁判官の職務上の独立についてです。

戦前までは司法権は天皇に属していました。現在の憲法では、最高裁判所及び下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)がすべての司法権を持っています。
司法権とは、民事、刑事、行政でおこった争いごとは最高裁判所を頂点とした司法裁判所にて法律を適用し宣言すること、つまり裁かれることを規定しています。
日本の裁判制度は原則として3回行う三審制度がとられています。裁判所が審理つまり事実や条理を詳しく調べ明らかにするを行う前に行政機関(公正取引委員会、特許庁他)が裁判を行うことを認めています。
また、法律に従い、公平・公正な判断をすることが裁判官としての良心としています。裁判官の主観的な倫理観や世界観で判断せずに、裁判官としての良心に従うことが定められています。

第76条 すべての司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律のみに拘束される。

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2009年01月10日

耳で読み解く日本国憲法「第74条」「第75条」

耳で読み解く日本国憲法第55回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第74条の法律及び政令への署名と連署と、第75条の国務大臣の訴追についてです。

74条は法律や政令の執行責任を明らかにするために、国務大臣と総理大臣の署名を必要とするものです。
75条は国務大臣の「訴追」が総理大臣の同意無しにはできないことを定めています。この「訴追」については、検察の起訴に限定するのか、その起訴に先立つ逮捕・勾留を含めるのかという点が問題となりました。
1948年の昭和電工事件で、芦田内閣の経済安定本部長官が、総理大臣の同意なしに逮捕勾留されました。これに対して東京高等裁判所は、「訴追」に逮捕・勾留は含まれないとの判断を示しました。

以上、第5章の「内閣」についての話は終わりです。
次回からは第6章「司法」の章に入ります。


第74条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
第75条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これが為、訴追の権利は害されない。

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耳で読み解く日本国憲法「第73条」

耳で読み解く日本国憲法第54回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第73条の内閣の職務権限についてです。

第73条は内閣の行政事務のうち重要なものを列挙しています。そのほとんどが、大日本国憲法下では天皇大権であったものです。


第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
・一 法律を誠実に執行し、国務を総理とすること。
・二 外交関係を処理すること。
・三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
・四 法律を定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
・五 予算を作成して国会に提出すること。
・六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
・七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

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2008年12月06日

耳で読み解く日本国憲法「第72条」

耳で読み解く日本国憲法第53回を、神戸大学発達科学部の和田進教授の解説でお届けします。

今回は第72条の内閣総理大臣の職務権限についてです。

日本国憲法では、内閣総理大臣は内閣の代表であって、内閣総理大臣が行政権を有するのではなく、内閣という合議体に行政権が属します。
総理大臣権限の「国会に議案を提出する」に関して、法律の議案提出は認められるべきものと考えられますが、公権力から国民の自由を人権を確保するための憲法に関しては、国民を代表する国会から提出されるべきものと考えられます。


第72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、ならびに行政各部を指揮監督する。

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